不確定性関係の展開とその普遍的定式化
量子論の根幹をなすハイゼンベルクの不確定性原理(または不確定性関係)は、アインシュタインの相対性原理と並び、最も一般に流布した物理用語の一つとなっています。不確定性関係は、量子の世界において両立しない事柄や相補的な性質を、広く代償(trade-off)関係として表現したものです。歴史的には、教科書で広く扱われる「量子ゆらぎ」の関係をはじめ、ガンマ線顕微鏡の思考実験で知られる「観測(者)効果」の関係や「量子測定の精度」の関係など、現在までに様々な代償関係が見出され、また多くの定式化が提案されてきました。 本セミナーでは、不確定性関係の発展の百年史の一端を、これら三つの典型的な関係を縦糸に平易に概説します。さらに、近年の提案の一例として我々の普遍的定式化を紹介し、とりわけ本定式化によって、従来個々別々に扱われてきた複数の代償関係が統一的に記述される様子を一望します。最後に、この新たな広い視点を通して、量子論における不確定性原理の不可能定理としての意義を振り返ります。